2008年05月11日

「肥土山農村歌舞」の演出を楽しむ

「肥土山農村歌舞」の演出を楽しむ
ポケットに折りたたんで入れて、雨の雫でヨレヨレになって、1日して乾いた「チラシ」です。

5月10日(土)
肥土山農村歌舞伎四国村公演「義経千本桜 つるべ鮨屋の段」行って来ました。

いろいろなブロガーの方が書かれているように、過酷な環境での観劇でした。

降り続ける本格的な雨=土砂降り。
且つ・・
「雨になると寒さが緩む」のは冬だけで、春の土砂降りの夜は”激寒”。ということを体感。

私は以前、地元の音楽家の門下生の演奏会を初めて見に行った感想を、
「satoの会の演出を楽しむ」というタイトルでブログにしました。

それは、私が「演出」というものを生業とした時期があり、
また、自分の仕事のベーシックな拠り所を「演出力」と思っている身として、
他の方々が創り上げるある種の「知的な積み重ね」にとても興味があるので、
自分が感じたこと、自分に「見えた」ことを書き記すことにしたからです。
「satoの会」の演奏会でも強い刺激を受けて、一気に書き進めました。

そして、5月10日、農村歌舞伎の舞台が終わって市内に帰る知人の車の中で、
思いがけずどんどんと出て来る私自身の感想。

まとめて言えば・・・「いい修練を見た」と感じた私がそこに居ました。

そしてそして~「肥土山農村歌舞」の演出を楽しむ~というタイトルで
『ブログに書きたく』なりました。
前置きはこのくらいにして・・・・

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※出演者、関係者の皆様、勘違い・思い違いで失礼な表現あるかも知れませんが、ご容赦いただければ幸いです。個人の感想として書かせていただきます。

舞台終了後の「カーテンコール」の最後に、主宰者で司会の方が

「それでは、振り付けの指導をして下さった方をご紹介します」と。

あ、『演出家』なんだな。と。

その方は、もう40年間、肥土山農村歌舞の指導をしている”山本さん”、というように聞こえました。40年・・・・・継続は力なり。技なり。成果なり。と、つくづく思いました。

農村歌舞伎は、台本が残されているものの、
いわゆる「口承伝統芸能」であり、そのセリフや口上の言い回しやその立ち居振る舞いは、
やはりある決まった指導者が、同じ意思、こだわり、考えを持って指導し続けないと継承しては行けないものだというイメージを持っていました。

と、偉そうなことを書きましたが、農村歌舞伎を、今回のようにきちんと客席に座って、
最初から最後までちゃんとセリフを聞き、その世界に入って観劇したのは、初めてなんです。

で、今回の舞台が始まって数分してすぐに、わたしはこの一座を・・・

「素晴らしい演出指導力を持った方と素直な稽古好きな役者たち」と感じていました。

・演技、所作に「練習不足で自信なさそうに」しているような振る舞いが感じられない。

・自信と確信を持って、歌舞伎特有の「一見、わざとらしく見える所作」を「素直」に演じている。

・変に照れたり、変にためらったり、妙に勘違い気味の力の入れ過ぎなど、プロではない演じ手に有りがちな「嫌味」がない。

・古典として守りたい所作、セリフと、少し今風に変えていっているセリフなどの混在振りが、
かなり微妙だが、私は「心地良かった」。

・指導者を信頼している演じ手たちだなぁと、感じた。

・長い、温かな目で演じ手を見て育てている指導者なんだろうな、と感じた。

・短大生の「お里」さんが居て、ほんとうに良かった、という舞台だと感じた。

・一緒に観劇した「大台を越えた目の肥えたお姉さま方」は、「男前やぁ~」と携帯カメラで、
(その間はセリフも耳に入らず)写真を撮りまくる役者も居たようで、それも、良かった。

・生演奏で浄瑠璃する地方の演奏、奏でる”ゆるゆるなサウンド”、いいいなぁ。


⇒そうそう、私、地方がやりたくなりました!


筋書き、悲恋悲劇の顛末・・・ほんと、古今東西、同じなんだなぁと、感じた。

思い違い勘違い、すれ違い、あの時ああしていれば、死、情、家族の絆、契り・・・

なんだかシェークスピアやギリシア悲劇で描かれているテーマと同じなんだなぁ、
人間の業って、万国共通で、かつ、やっぱり何世紀も変わらない本質もあるんだなぁと。

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※ブログUPしたあとから追記

残念だったこと。

・観客の誰もが感じたこと ⇒ 「ワイヤレスのピンマイク」を付けた時の演技、所作の整理ができていなかったこと。

これは、「振り付けの指導者」とは別に、ステージマネージャー(舞台監督)、
日本舞踊や古典舞台で言うところの「狂言さん」が不在だったのか?

普段は生の声でやっていて、今回、リハーサルはマイクを付けずに行なったか?

このくらいは気にならない、という判断をしていたのか。
(=あまり、細かなことは気にならない?)

和服なので、懐にあれこれ入れたり出したりする所作は多いので、
ピンマイクの位置とか、手の動きの整理とか・・・・

うーーん、少しでも回避できる手立てはあったのではないかと、思ってしまいました。

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地域で語り継ぎ、演じ続けるということについても、いろんなことを感じて”妄想”していました。

今回のように小さな子供さん、19才の短大生、30、40代の役者、50代の地方・・
これだけの多世代の地域の方々が一同に集い、練習をして舞台を完成させる。

この日々の積み重ねが、毎日の生活の中に溶け込んでいるのでしょうか。
ゴルフに行き、釣りをし、スポーツやレジャーに興たりのいろんな皆さんの生活と同じように、
「芝居の稽古」がスーーーッと、溶け込んでいるのでしょうか。

いろいろな事を思い起こさせてくれました。ありがとうございます。

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あの土砂降りの中、200名以上の観客の方々が帰らずに見入っていたのは、
いろいろなブロガーの方が書かれているように、今回の催しモノの持つ「力」でしょう。

この舞台の実現に関わられた、(当日、突然”お役”を仰せつかった方なども含め)すべての方、
お疲れ様でした。ありがとうございました。



Posted by rookie1957@ストリート at 22:06│Comments(2)
この記事へのコメント
殿下・・昨日はのっぴきならねえ用事で観劇できませんでしたが、
今日Lindaに会ってお話聞きました。
その上↑このようなレポ・・・クリスも見に行った気になりましたよ◎
長文なので・・(笑)もう一度読み返してかみしめたいと思います!
Posted by クリスティーヌ♪ at 2008年05月11日 22:14
左肩 びっしょりで 風邪ひきませんでしたか?

今回も詳細なレポート さすがです!
るいままと 男前さんに興奮して 写メとりまくって 肝心なところ見逃してしまい ご迷惑おかけしました(^ ^; あはは
Posted by LindaLinda at 2008年05月12日 20:58
 
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「肥土山農村歌舞」の演出を楽しむ
    コメント(2)